賃貸物件の契約には形態が2種類あります。

これは「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」です。
どちらの契約になるかは貸主の意向によります。物件(1棟の建物)またはお部屋によって募集の段階からどちらかに定められています。

一般的な賃貸物件は普通借家契約が大多数を占めていますが、探すエリアや希望条件によっては定期借家契約の物件を見かけることもあります。

本記事では定期借家契約を普通借家契約と比較しながら、定期借家契約を条件とする貸主側の理由、メリット、注意点まで解説します。

Contents

普通借家契約と定期借家契約の違い

賃貸物件を借りるには貸主と賃貸借契約を結ぶ必要があります。

普通借家契約も定期借家契約も賃貸借契約に変わりありませんが契約内容は異なります。

契約内容を理解せずに契約してしまうと後々トラブルになりかねません。

まず初めに普通借家契約と定期借家契約の違いについて理解しましょう。

賃貸借期間の定め

普通借家契約の「契約期間は1年以上」に設定する決まりがあります。
しかし、契約期間1年としている普通借家契約の物件を見かけることは多くありません。

一般的な普通借家契約は契約期間を2年とされていることが大半です。

なお、契約期間を1年未満に設定されていた場合には「期間の定めのない契約」と見なされます。
不動産屋を介して募集されている普通借家契約の契約期間に1年未満とされている物件を見かけることはほとんどありません。

一方で定期借家契約は契約期間を貸主側が自由に設定できます。
1年未満の契約期間でも可能となり、契約期間は6か月という物件もあれば、契約期間5年という物件もあります。

契約更新の可否

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【普通借家契約】

契約期間(一般的に2年間)が満了しても借主が引き続き居住を希望した場合は更新できます。
貸主は借主の更新希望を拒絶したり、解約することは原則できません。

例外として貸主に正当な事由がある場合には貸主は更新を拒絶し解約することができます。

【定期借家契約】

読んで字のごとく定められた期間の契約となります。
したがって契約開始時点から期間が定められているため更新という概念はなく、契約期間が満了した時点で契約も終了となります。

では定期借家契約は期間が満了したら退去しなければいけないかというと必ずしもそうとは言えません。

契約期間満了と同時に新たに契約を結びなおすことに貸主が了承した場合に限り引き続き居住できます。
これを再契約と言います。

全ての定期借家契約において再契約ができるわけではありません。

中途解約の原則

【普通借家契約】

契約期間の途中でも借主は解約することができます。

一般的な契約では借主から解約をする場合は解約日の1~2か月前までに申し出ることで解約できるとされています。
この事前の申し出期間を「解約予告」といい1か月前または2か月前の予告になるかは物件により異なります。

【定期借家契約】

契約期間中は解約を原則できないとされています。

ただし、中途解約に関するルールが2つあります。

  1. 居住用建物で床面積が200㎡未満のものは転勤、療養、親族の介護などのやむを得ない事情により生活拠点に使用することが困難になった時には契約期間中でも解約することができるとされています
  2. 中途解約に関する特約があれば、その定めに従う

定期借家契約であっても2のように中途解約に関する特約が定められていることがあります。

「中途解約する際は〇か月前までに申し出る」「解約予告:〇か月」といった内容が契約書等に記載されていれば、普通借家契約と同様に中途解約できることになります。

その他 (契約方法)

【普通借家契約】

口頭又は書面による契約のいずれでも可能とされています。
口頭の契約というのは大家さんと直接契約し、大家さんが書面を不要とした場合に限ります。

実際には不動産屋を通して契約するでしょうからほとんどの契約は書面による契約となります。

【定期借家契約】

公正証書等の書面による契約でなければいけません。
※公正証書とは、法務大臣に任命された公証人が作成する書面(公文書)です。

「定期借家契約=公正証書による契約」のみと誤った認識をされている人がいますが、正式には公正証書による契約でなくても書面による契約であれば可能です。

また、契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了することを契約書とは別に借主へ書面を交付し、あらかじめ説明をしなければいけません。

定期借家契約として募集される理由

ここまで普通借家契約と定期借家契約の違いを解説しました。

最大の違いは定期借家契約は契約更新ができないことです。

ではなぜ契約更新ができない定期借家契約にする必要があるのでしょうか?

そこには貸主側の理由があるのでご紹介します。

将来的に所有者(貸主)が使用するため

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マンションや戸建てを購入した人が転勤などで転居を余儀なくされたので

  • 「転勤の期間のみ賃貸に貸し出しておきたい。」
  • 「将来は子供夫婦を住まわせたい。」

など将来的に所有者が自己使用を考えているケースがあります。

戸建てや分譲マンションのファミリータイプの間取りに多くみられます。

建て替えや取り壊す可能性がある

所有者が近い将来に賃貸物件の建て替えを考えていたり、建て壊す可能性がある場合に定期借家契約とすることがあります。

築年数の古い物件に多く見られます。

悪質な入居者の更新を断れるようにしておきたい

普通借家契約では借主は契約期間を更新する権利があります。
善良なる借主の更新であれば貸主は嬉しいのですが、家賃滞納や近隣トラブルなど悪質な入居者には更新したくないのが貸主の本音です。

そこで、善良な入居者には再契約により引き続き住んでいただき、悪質な入居者には契約終了できるようにしているのです。

単身者向けの物件で多く見かけます。

定期借家契約のメリット

普通借家契約にくらべ定期借家契約は貸主の将来的意向が反映されているケースが多いといえます。

では、借主にとってのメリットはどのようなものがあるのか見ていきましょう。

普通借家契約に比べて賃料など安いことがある

 

 

 

 

定期借家契約の原則は契約更新ができないので、契約満了と同時に次のお部屋を借りる初期費用が掛かってしまいます。
普通借家契約の更新に係る費用は一般的に賃料の1~2か月分なので、初期費用にくらべ更新料の方が安く済みます。

したがって毎月の賃料などが普通借家契約と同条件であれば定期借家契約の物件は借り手が付きづらくなります。

このデメリットを補うように初期費用や家賃が周辺の相場に比べて安くなっていることがあります。
特に契約期間の短い物件ほど割安な家賃で募集されています。

建物全体が定期借家契約であれば入居者間のトラブルは少ない確率が高い!?

再契約可能としている定期借家契約の物件は貸主が悪質な入居者の更新を拒絶するために定期借家としているケースがあるので、迷惑行為をする入居者が長く居住するリスクが少なく、住環境が確保しやすいといえます。

契約期間が長い物件は更新料が掛からない分お得なことも

例えば普通借家契約の物件に5年間居住した場合、2年後、4年後に更新料がかかります。
一方、契約期間5年の定期借家契約に期間満了まで居住しても更新料はかかりません。

入居期間が決まっている人にとっては条件のいい契約形態といえます。

定期借家契約の物件を検討する際に注意すること

契約後に後悔しないように定期借家契約ならではの注意点があります。契約をしてからでは遅いので、必ずお部屋を決める前に不動産屋に確認するようにしましょう。

1. 定期借家にしている理由を確認する

理由によっては再契約の可能性は低いこともあるので当初から理解しておく必要があります。

2. 再契約時の費用と費用明記の確認

再契約ができるとなった場合の再契約にかかる費用の確認、そして最初の契約書等に再契約料について明記されていることも確認してください。
再契約は更新と異なり契約ですので初期費用と同額がかかることもあります。
一方、再契約料を1か月分としている物件もあります。

初期費用がもう一度必要となる場合と、賃料1か月分の再契約料では大きな違いですから物件を検討している段階でしっかり確認するようにしましょう。

3. 中途解約は認められるか

定期借家契約は原則として中途解約は認められていません。
中途解約をしてしまうと違約金が発生することもあります。

中途解約は可能か?中途解約ができない場合は違約金がいくらなのか?しっかり確認しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

定期借家契約は契約期間や再契約の可否によっては借主にとってメリットが生じることがあります。

普通借家契約との違いを理解し、しっかりと注意点を確認しておくことでプラスメリットが生じることが期待できます。

もし、お部屋探しの際に「定期借家」という物件を見かけましたら本記事を参考に検討してみてください。